(6のつづき)
ジャッキー・デュガン。彼女のことは僕も知っていた。
ジャッキーはウィンドウズ・オブ・ザ・ワールドという大きなレストラン兼結婚式場で、パーティーや結婚式をコーディネートする仕事に就いていた。ミシェルの結婚式の担当が彼女だったので、打ち合せも含め三回彼女と会って話し合いをしていた。彼女はいつでもてきぱきと仕事をする人で、かといって尖ったところはなく、その仕事をすることに大きな喜びを感じているような印象が強かった。打ち合せの最中、楽しそうですね、と声をかけると「プライベートでもパーティーは私が仕切るから、これは天職よ」と言って笑っていた。
2001年9月8日に行われたミシェルの結婚式は、ウィンドウズ・オブ・ザ・ワールドで開かれ、ウィンドウズ・オブ・ザ・ワールドはワールドトレードセンターの107階にあった。
事件が起きてから、ジャッキーのことは僕も常に気になっていて、無事でいてほしいと願っていた。それまで確かめる術がなかったし、最悪の結果を聞くのが嫌でミシェルにも簡単に訊ねることが出来なかった。ミシェルは下を向いたまま、「昨日出た犠牲者のリストに、彼女の名前を見つけた」と言った。声が震えていて、涙を堪えているようだった。僕にはかける言葉が見つからず、しばらく二人とも黙ったまま俯いていた。
長い沈黙の後、ミシェルが顔を上げた。両目には涙が溢れそうになっていたが、無理に笑顔を作ろうとしているようだった。「写真は素敵よ」とミシェルが言った。
「だけど、私には人生でいちばん幸せで、いちばん悲しい記憶になってしまったわ」
そう言ってから、また無理に笑おうとしていた。